わたしの知らない研8の珠城りょう
以前から少しばかり気になっていたことがあります。
わたしが珠城りょうさんを知ったのは、というか、月組を初めて見たのは『All for One~ダルタニアンと太陽王~』でした。その後半年程度の期間を空けて、徐々に珠城さんに興味を持ち始めたところで、彼女がトップスターとしてはとても若いと言われていることを知ります。研9でのトップスター就任は異例のスピードだと。
ところが、宝塚に全く詳しくないわたしには、それがどのくらい珍しいことなのか、どういった経緯だったのかというのはイマイチわかりませんでした。
そもそも、舞台上での珠城さんは、安定感とか大人の男っぽい落ち着きだとか、(未熟という意味も含む)若さといった特徴からは遠いところにある男役だと思うので、余計に「若い」と言われていたことに対してピンと来なかったのだと思います。
トップスターとして若い?
この記事を執筆しているのは2019年2月、珠城さんはトップスターとして3年目を迎えています。この時点での各組トップスターと年次は以下の通りです。
花組 | 月組 | 雪組 | 星組 | 宙組 |
明日海りお | 珠城りょう | 望海風斗 | 紅ゆずる | 真風涼帆 |
(研16) | (研11) | (研16) | (研17) | (研13) |
真風さんが研13であり、現時点で珠城さんが特別若いという印象はありません。
当時はどうだったのかなと思い、トップスター就任直後である2016年12月時点*1での並びを調べました。
花組 | 月組 | 雪組 | 星組 | 宙組 |
明日海りお | 珠城りょう | 早霧せいな | 紅ゆずる | 朝夏まなと |
(研14) | (研9) | (研16) | (研15) | (研15) |
あっ……なるほど……。
このうち、珠城さんは9月に龍真咲さん(研16)の、紅さんは11月に北翔海莉さん(研19)の後任としてトップスターに就任したばかりでした。確かに、すごく若いと感じる……。
でも、研9で、とは言え、大劇場お披露目公演の『グランドホテル』は2017年1月からの公演だし、それもうほぼ研10じゃない?とも思っていました。タイミング的な問題で、すごく若く見えてしまっただけかもしれない、とも。
2番手期間が短かった
もう一つ、珠城りょうさんは2番手期間が短かったということをよく目にしました。それでも、2番手として大劇場公演は2作品経験しているし、つまり約1年は2番手だったわけでしょう? そう考えると、1年は結構短いけれど、めちゃくちゃ短かった!というほどではないのではないかなぁ……とこれもぼんやり考えていたことです。
珠城さんの2番手~トップ就任前後の時期については全く知らないので、当時の発表や出来事を時系列に整理して、当時どう受け止められていたかのリアルな感覚を知りたいと思いました。
その前に、月組トップスター龍真咲時代の番手に関して
こちらは本論ではないため、わたしの聞きかじりの知識で簡単にまとめてしまいます。*2
龍真咲さんのトップスター就任に伴い、準トップスターという位置付けで明日海りおさんが就任します。まず準トップスターとか聞いたことないし、この体制で大劇場2作品をトップと準トップ役替わりで公演していたというので、この時点でかなり異例のことだったのだろうなぁと思います。その後、明日海りおさんの花組への組替えによって、トップ/準トップ体制は終わりました。
トップスターに続く番手は、このあと大劇場4作品ぶん、明示されることはなかったようです。*3 明日海りおさんの組替えと同時期に月組に組替えして来たのは凪七瑠海さん。同期の美弥るりかさんとW二番手格、それと同格程度の役付きで珠城りょうさんがいる時代になりました。
そしてこの時代が終わる時期について、次項で追います。
2015年9月~2016年9月まで、たった1年間
2015.9.1~ | 『DRAGON NIGHT!!』 |
公演プログラムとフィナーレの並びが龍・珠城・美弥になる | |
2015.10.1 | 公演ラインナップ発表 全国ツアー 主演:珠城りょう、愛希れいか |
2015.10.29 | 『タカラヅカスペシャル2015』ポスター画像アップ |
各組二番手の並びに珠城りょうが掲載される | |
2015.11.13~ | 『舞音-MANON-』『GOLDEN JAZZ』(宝塚大劇場) |
フィナーレで珠城りょうが二番手羽を背負う | |
2015.12.15 | トップスター龍真咲 退団発表 |
2016.1.3~ | 『舞音-MANON-』『GOLDEN JAZZ』(東京宝塚劇場) |
2016.3.15 | 次期トップスター 珠城りょう決定 |
2016.3.19~ | 『激情』『Apasionado(アパショナード)!!III』(全国ツアー) |
2016.6.10~ | 『NOBUNAGA<信長>-下天の夢-』『Forever LOVE!!』(宝塚大劇場) |
2016.8.5~ | 『NOBUNAGA<信長>-下天の夢-』『Forever LOVE!!』(東京宝塚劇場) |
2016.9.4 | 龍真咲 退団 |
2016.9.5 | 珠城りょう トップスター就任 |
調べながら書き出して、「えっマジか」「マジで言ってんの?」と衝撃を受け止めきれませんでした。2番手期間が短いどころの騒ぎじゃない、初めて2番手羽を背負った日から4か月後には次期トップスターになることが決まっているとは……。
珠城りょうの負荷テストでもしてたの?
加速度を増して動き出す時代
2番手の全国ツアー主演は、2014年に紅ゆずるさんがしているし、最近だと2018年には柚香光さんが、2019年には礼真琴さんが行う予定になっています。それらと異なるのは、全国ツアー主演珠城りょうと発表された時点では2番手羽を背負ったことがなかった(=月組2番手と認識されていなかった)状態だったことでした。しかも現トップ娘役*4である愛希れいかさんを相手役に迎えての公演、そりゃあ……そりゃあ色々あったんでしょうね……という……。
『タカラヅカスペシャル2015』ポスター画像での2番手示唆があり、『舞音-MANON-』『GOLDEN JAZZ』ではその通りに2番手羽を背負って大階段を降りることになりました。大劇場公演千穐楽の翌日に龍真咲さんの退団発表があったとき、珠城りょうさんが次期トップスターになると考えた人はほとんどいなかったのではないでしょうか? 何もかもが突然動き出し、時代が変わってゆきます。
そういえば、珠城りょうには時間がなさすぎた、と言われているのを見たことも思い出しました。
トップスターになるということ
珠城さんは度々、トップ就任のお話をいただいたときはすぐにお返事できなかったという話をされていますが、それは当然トップスターに「責任」という側面があるからだと思っていました。実際に、彼女の発言からそれを読み取ることはできるのですが、彼女が言及しないもう一つの側面がトップ就任にはある、ということを、今回順を追って調べていくことで気づきました。
トップスターになるということは、退団へのカウントダウンのスタートでもあります。退団されるトップさん・トップ娘役さんの会見を見ると、終わりを意識してその立場に就くのだということは、わたしにも何となくわかってきました。
珠城さんがトップ就任の打診をされたのは、おそらく、驚くべきことに研8のときです。彼女の意思に関わらず、研8の時点で自身の去就すら突きつけられることになったのだ、ということをわたしはようやく理解しました。
2019年2月とは
美弥るりかさんの退団発表が数日前にあり、七海ひろきさんが大劇場を卒業し、今日は紅ゆずるさんと綺咲愛里さんの退団会見がありました。
宝塚を熱心に見るようになってからまだ1年程度なので、こんなにも心が千々に乱れるようなことが初めてでとても動揺しています。そして、タカラジェンヌを愛する人ならば誰でもが経験することになるその時を、わたしはどう迎えるのだろうということが頭から離れないでいました。空っぽになってしまうのか、絶望してしまうのか、清々しい気持ちになっているのか、たくさんの感謝を送っているのか。
そんな中で気を逸らすようなつもりで、「気になっていたけどそのままにしていたこと」を調べることにしました。そうして改めて、彼女たちが自分の時間と向き合いながら宝塚という世界で生きているということを実感しています。
じゃあ、わたしもそうやって生きようかな。
「一緒に行って欲しいと、お願いしたいのですが……でも私は死にかけてるし……」
「わたしたちはみんな、いずれ死ぬのよ」