Fly me to the Moon

ってタイトル付けて記事書いてしまった(ついに)

宝塚どこに泊まればいいの問題

こんにちは!

初めての贔屓が宝塚歌劇団をご卒業されてからやっと2週間が経過しようとしている今、明らかに今じゃなくていい記事を書きたくなってしまいました。

それが『宝塚どこに泊まればいいの問題』です。

 

わたしは関東在住で、初めて宝塚大劇場に行ったのは2018年月組エリザベート上演時でした。以降「で、宝塚どこで泊まればいいの?」という問題に解が見つからないままこのような節目を迎えましたが、土地勘のない人間がまず困る宿選びの実録をお届けします。

 

宿選びと一言に言っても、何を重視しているかで選択肢は全く違ってくると思いますので、以下にわたしの宿選びのポイントを記述します。(似たポイントが多ければ、この記事は参考になるかもしれません)

・目的地への近さ

・最寄り駅から迷わないこと

・アクセスは乗り換えが少ないこと

・湯舟には浸かりたい(なので阪急のレム系が除外になってしまいます)

・お手頃価格であること

最後の点に関しては、2020年初頭から続くコロナ禍によってホテルの価格帯が大きく変動し、ハイクラスほど従前からは大きい値下げ幅になる一方で、集客を見込むことができた宝塚大劇場周辺のホテルではあまり価格帯の変動は見られませんでした。

そういった特殊事情も含みますので、この記事が5年後10年後に読まれている場合はお役に立てないかとは思いますが、実用記事というよりは旅行記としてご覧ください。

 

宝塚ホテル

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初心者の憧れ、宝塚ホテル。月組の元組長である憧花ゆりのさんが支配人でいらっしゃるので、運がよければお目にかかることもできます。

2020年に移転開業したばかりなので、どこもかしこも綺麗です。やたらシャンデリアがある。お部屋に続く廊下の絨毯の柄は、花組月組雪組星組宙組・専科の各モチーフが隠されていますよ。吹き抜けロビーの2階には、宝塚歌劇の衣装や小物・舞台写真が展示されていて、宿泊者以外も見ることができます。

シングルのお部屋は少々手狭ではありますが、バス・トイレがセパレートでバスタブが大きめなのがわたしには嬉しい点です。テレビではスカイステージが視聴可能で、タカラヅカオンデマンドで配信の番組も無料で見られます!価格帯は、定宿とするには少しお高いと感じます。

一番の利点は、近いところ。正真正銘、宝塚大劇場のすぐ隣です。わたしは幕間休憩にホテルの自室に戻っていました。マチネとソワレを連続観劇をするときも、一旦お部屋に戻って仮眠することもできます。ギリギリまで体力を温存したいソルジャーにとっての兵舎(※私見です)。

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旧宝塚ホテル(閉業)

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今はすでに解体されてしまった旧宝塚ホテル、開業は1926年(大正15年)でした。宝塚大劇場最寄りの宝塚駅の隣、宝塚南口駅に立地していました。宝塚大劇場から旧宝塚ホテルに徒歩で行くためには、武庫川に架かる長い橋を渡らなければいけませんでした。天候が悪いとちょっと大変。でもサンドイッチで有名なルマンの宝塚南口本店が近いので、買い出しに行けばお手頃でお腹いっぱいの朝ごはんに。

施設の古さは否めないものの、もはや完全に味になっていました。クラシックという上等な感じではなく(いい意味で)、ずっとここにあって、ずっと誰かがいたんだなぁと思わせてくれる佇まいでした。増改築が繰り返されたようで、場所によってさまざまな時代を見ることができました。お部屋の備品の年季の入った花柄プリントのごみ箱が印象に残りすぎています。あの場所に行くのに、間に合ってよかったな。

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宝塚ワシントンホテル

ごく普通のビジネスホテルではあるものの、宝塚駅前という立地と価格帯のバランスが取れていて非常に使い勝手がいいホテルです。ただし、当然ながら公演中は満室になりがちです。スカイステージが視聴可能。シャンゼリゼ(レストラン)の和朝食が好きでよくいただきました。甘いものよりしょっぱいもの、パンよりごはん派のわたしにとって、宝塚周辺での朝食はなかなか選択肢が無かったので、たいへんお世話になりました。

 

さて、土地勘のない初心者はここからが問題です。コロナ禍においてはともかく、それ以前は上記のホテルは基本的には既に予約が取れなくなっていることが多かったです。次に候補に挙がるのはホテル若水でしょうが、一人旅しかしないわたしにとっては選択肢となりませんでした。

 

レディースホテル プチハウス

手塚治虫記念館方面のその先にあるたぶん通の宿。このへんにエンジェルラブがあるのね!と知ったり。安価ですが基本的に相部屋なので、一人が好きなわたしは以前は選択肢にありませんでした。コロナ禍中では、二人一室のところ一人一室(ツインに一人で泊まるイメージ)で予約受付をされていたので、最後の最後に白いお洋服で泊まらせていただきました。

ホテルというよりは単身者向け賃貸物件っぽい内装ですが、お部屋にトイレもバスもありましたので特に不自由なく過ごすことができました。パジャマは持参が必要です。ベッドはさすがに狭くて硬かったので、眠れるかな?と心配しましたが、疲れきっていたため即寝ました。

宝塚千秋楽の翌日チェックアウトをお願いすると「良いご卒業でしたか?」と声をかけていただきました。そのときに「はい!」と心から言えたことが、本当に幸せに思い出されます。さすが通の宿。

 

三田ホテルメルクス

宝塚駅から電車で一本の三田駅にあるホテル。初めて行ったときは、宝塚駅から一気に山奥に連れていかれる驚愕の車窓からの風景で、何かの間違いかと思いました。三田駅周辺にはショッピングモールもありますし、怖がらなくて大丈夫です。

宿泊施設の規模としては大きいですが一般的なビジネスホテルです。価格帯は少し割高に感じました。スカイステージ視聴可能なお部屋が選べます。なお、関東圏の人は最初「ミタ」と読んでしまうと思いますが「サンダ」です。

 

ホテルプラザオーサカ

向かう先は三田駅ではないのか?と思ったわたしはなぜか十三駅に降り立ちました。宝塚駅から西宮北口駅乗り換えで5駅。えっ遠くない?と思われた方正解です。ただ、わたしにはわからなかった。

三田ホテルメルクスよりも少しだけ安い価格帯、こちらも宿泊施設としての規模は大きいですが一般的なビジネスホテルです。そんなことより十三駅前の雑然とした感じがすごい。このホテルにたどり着くためにラブホ街を抜けなければならないこともあり、夜遅くなってから歩くのは結構怖かったです。少なくとも宝塚歌劇を観た後に歩きたいルートではなかった。でもそれを別とすれば、十三駅前のあの感じはすごく興味がある雰囲気です。

 

ホテルユニゾ大阪梅田

宝塚駅から梅田まで30分強ということは、梅田でホテルを探せばいいのでは?とようやく気付きました。梅田はホテル激戦区ですので、わたしが絞り込んだのは以下のポイントです。

・チェックアウト時間が遅いほうが良い

・大阪梅田駅(阪急)からのアクセスがわかりやすい

梅田芸術劇場へは過去何度か泊まりで行ったことがあったので、梅芸方面だけはなんとなくわかります。そのときに利用していたのは、ホテルビナリオ梅田やハートンホテル北梅田でした。

上記条件で絞り込むとこちらのホテルが候補に上がります。そして立地を考えるとコストパフォーマンス的には最上位レベルだと思います。つまりとても安い。外観とロビーが綺麗ですがお部屋はごく一般的なビジネスホテルです。チェックアウトが12時なのが嬉しい。常宿にしたいくらいでしたが、わたしが泊まったお部屋のバスルームに若干においがあり、お風呂でゆっくりしたいのでそこがマイナスポイントでした。

お隣にあるcafeゆう梅田店は、落ち着いた雰囲気で軽食もあり、梅芸周辺のカフェが混み合っているときでもあまり影響がない穴場です。(↓こちらはcafeゆう梅田店)

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名鉄イン 新大阪駅東口

正解は本当に梅田なのか?と謎の探究心を持ったわたしです。新幹線を使う場合、新大阪駅ですぐ荷物を預けることができれば最短かつ身軽に宝塚へ向かえることを期待してホテルを探しました。なので、探す条件は駅から近いこと。

こちらのホテルは2020年にオープンしたばかりで、お部屋の内装もデザイナーズと冠していて相応のスタイリッシュさ。とても快適でした。そして駅からとても近いので、新幹線から降りてホテルで荷物を預けてサッとJR在来線で宝塚へ向かうというオペレーションが淀みなく実行できました。便利なので複数回利用しました。

意外に心底助かった点は、新大阪駅在来線の駅ナカにあるエキマルシェ。(わたしが利用したときは、改札外のエキマルシェは開業前〜休業中でした)利用した時期は大阪の緊急事態宣言の要請内容がとても厳しく、飲食店はまず休業中でした。兵庫県も同様で、宝塚阪急百貨店も18時閉店でした。なので、15:30の回を観終わった時点で食べるものを買える場所がほぼコンビニに限定されていましたが、新大阪駅エキマルシェのうちお惣菜・お弁当の店舗が20時まで営業してくれていたおかげで美味しい食べ物を買うことができました。

帰路もホテルで預けていた荷物を受け取って新幹線に飛び乗れば良かったので本当に利便性抜群。新幹線ユーザーでお値段と折り合いがつけばとてもおすすめです。

 

ホテル阪急レスパイア大阪

予約サイトを見ていてふと気付く。ビジネスホテルの価格帯と、一部のハイクラスに分類されるホテルの価格帯が接近している。1,000円でも、500円でもとにかく安く!という方へはおすすめできませんが、ビジホ価格にちょっと上乗せして気分良く過ごせるならそれがいいなぁと、まぁこんなに関西との間で反復横跳びするのもこれが最後だしという気持ちもあって選んだホテル阪急レスパイア大阪。

宝塚歌劇を観て阪急系列のホテルに帰ると満足度が上がる(ような気がする)。梅田で宿に迷うなら阪急にお金を落とそう。阪急を意識するようになったら一人前です(何の?)。

 

番外編(東京宝塚劇場)周辺のホテル

帝国ホテル、レム日比谷、ザ・ペニンシュラ東京、THE GATE HOTEL 東京 by HULIC、ただ単に近さを競うとこの辺りなんですが、レム日比谷以外はこの、お手軽さとかけ離れた、この……。もちろん、新橋方面銀座方面にはいくらでもホテルはあるものの、わたしが求める機能は「隙間時間にすぐ帰って休憩できる」なのです。(コロナ禍の現在では「カフェで時間をつぶす」のもリスクなので…)

今回東京千秋楽に合わせて泊まったのはTHE GATE HOTEL 東京 by HULICでした。さすがにお手頃とは言えませんがお得ではある価格帯になっていたので、こんな時代でもなければ一生宿泊することも無いしと利用させていただきました。宿泊中、何するにも部屋を歩き回らなきゃいけないなぁと思っていたのですが、よく考えたらわたしが住んでる部屋より広かった。キングベッドをご用意いただいていたので、庶民らしく横に使って寝ました。

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本当に快適で楽しかったし、やはり劇場が近くてとても便利でした。でもフロントのあるロビーラウンジのお客さんがおしなべてウェイだったのでビビっていました。

 

 

ホテルをセットにして観劇すると、日常生活から完全に切り離されるので開放感がありますよね。わたしは観劇後、特に何もせず、幸せだな〜って一人で気持ちを抱きしめている時間が大好きです。

桜嵐記〜桜は咲いていたか〜

※副題を変更しました。2021.8.1(旧〜おもかげの花〜)

前回更新したときには既に珠城りょうさんは退団発表*1をされていましたが、それから1年4ヶ月以上が経過した今、退団公演が上演中です。

『桜嵐記』については、もはや思い入れの無い状態で出会ってみたかった作品でもあります。でも思い入れの無い状態で『桜嵐記』に出会ったわたしは、思い入れのある人がこの作品をどう受け止めたのかを絶対に知りたがると思います。なので、思い入れしかないわたしが見た『桜嵐記』のことを、この作品に現れる桜と雪のことを書きます。

 

桜嵐記の雪

『桜嵐記』に於いて紙吹雪で表現されるものは桜と雪です。紙吹雪が舞うとき、書き割りや舞台セットで場面の補強をしてあることが多く、それらをことさら混同させる意図は感じられません。それでもわたしは、『桜嵐記』の桜と雪は夢と現とを分けるもののように思います。

雪が降るのはまず第2場、正行の登場の場面です。弓を放つと張りつめた空気が揺れて枝から雪が零れ落ちるようです。これは天王寺の戦いで史実上でも12月なので写実としての雪と見えます。

次に雪が降っているのは第5場、渡辺橋近くで凍った川に落ちた敵兵を掬い上げ救助している場面で雪がチラついています。これも天王寺の戦いの後ですし、台詞からも真冬ということが分かります。

 

史実との相違

最初に気になっていたのは、タイトルであり主題である「桜」はこの作品で描かれる時系列の中では咲かないことです。

史実上天王寺の戦いは12月にはじまり四條畷の戦いは2月、冒頭の演出にしても、主題歌「冬に咲け 雪に咲け 咲き狂え」とあるのも、上田久美子先生が史実を知らなかったとは考えられず、かと言って「桜」ありきで敢えて季節をずらしたにしては、妙に明確に冬を描いているのです。ですから、矛盾するはずの「桜」と雪が降る季節とを同時に見せたかったのではないかと思いました。

 

桜嵐記の桜

桜を模した紙吹雪が舞う場面は、第12場如意輪寺の庭で桜嵐の中正行と弁内侍がつかの間の逢瀬に身を委ねる場面、第14場四条畷で吹き上げる桜の中正行が一人立ち現れる場面、そして烏帽子を落としざんばらの髪で両手に太刀を掲げて一人戦う場面と、正行の最期の場面です。

東京公演も中日を過ぎた7月下旬から、明らかに紙吹雪の量が増えました。公演日数も残りが少なくなり、紙吹雪の残量配分に余裕が出てきたのかなと思いますが。

『桜嵐記』では紙吹雪が一掃されるような舞台転換がないため、幕開けから雪の紙吹雪も桜の紙吹雪もすべてが舞台上に積もりっぱなしになるのです。

正行の最期の場面ともなれば、舞台上は白色のライトに照らされて一面真っ白になりました。それがまるで一面の雪景色のようでした。正行の亡骸は雪に埋もれて静かに見えなくなっていったのではないか、と思いました。やはり、史実の季節と同じく、ここでも降っていたのは雪ではなかったのか。

 

もののふの花

今回この記事を書くにあたって、ルサンクの脚本を読み直しました。

雪解待ち咲き初む 吉野の花々は

梓弓 帰り来ぬ命のごとく燃ゆ

咲け 咲け 咲け 咲け

もののふの もののふの もののふの花

冬に咲け 雪に咲け 咲き狂え

冒頭正行が歌いますが、この「吉野の花々」とは、そこに生きた命のことではないかと急に気がつきました。だからもののふの花、冬に、雪に咲く花なのだと。

雪が降るはずの季節に降る桜の花々は命のメタファーなのかと考えると、弁内侍の「こんな花は、無数の命が燃え立つように見えます」は、比喩というより、彼女が見たのは命そのものだったのかもしれないと思ったり、ここで降った美しい花々が地に落ちて兵に踏みにじられていったのも、やはり命だったのだと思ったりしました。

 

おもかげの花

第15場出陣式でのカゲコーラス

咲け 咲け 咲け 咲け

おもかげの おもかげの おもかげの花

 おもかげの花は第10場でも弁内侍が口にする歌詞であり、この出陣式が(というよりこの作品自体が)弁内侍の回想に拠っているとすると、「桜」とは弁内侍が見ている夢のようにも思うのです。

史実の季節通り、弁内侍と正行の出会いと別れの中で桜は咲いていなかった。とすると、桜を降らせたのは誰だったか、わたしは弁内侍であったように思います。

正行を失って初めて迎えた春の桜は美しかったのだろうと。正行と共に見たから美しかったのではなくて、正行に出会ったから美しかったのだろうと。

弁内侍は、大切な人を失った後でも春の色を失わなかった、だから40年もの間生きてこられたのではないかと、そうだったらいいなと思いました。

 

桜は咲いていたか

2020年、新型コロナウイルス流行の影響で、宝塚歌劇団の公演スケジュールはすべて延期になりました。『桜嵐記』の本来の公演スケジュールは、宝塚大劇場で11月13日に初日を迎え、東京宝塚劇場で2月14日をもって千穐楽を迎える日程でした。

これは『桜嵐記』で描かれる季節とほぼ同じです。

わたしたちは、愛する人を愛する場所から見送って迎えた春の桜を美しく想ったことでしょう。桜を想うとき、この作品を想ったでしょう。

もしそんなふうにして40年生きたとしたら、『桜嵐記』を満開の桜の中観に行った思い出になったかもしれないなぁと思います。

桜が本当に咲いていたのかどうなのか、それはどうでもいいことのように思います。

 

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*1:2020年3月16日

緞帳前

「緞帳」(どんちょう):劇場で舞台の最も客席側にあり、お客様の目から舞台を隠し、舞台と客席を区切る、大きな上下する幕(引用http://www.moon-light.ne.jp/termi-nology/meaning/doncho.htm

「緞帳前」:下りた緞帳よりも客席側にある舞台のツラ部分のこと。

 

ではない。

「緞帳前」と言ったら、2019年6月9日東京宝塚劇場千穐楽を迎えた、月組公演『夢現無双 -吉川英治原作「宮本武蔵」より-』『クルンテープ 天使の都』の終演後、当公演をもって退団となる退団者一同の卒業セレモニーも終了し、月組恒例千穐楽大ジャンプという謎儀式*1も終え緞帳が下りた後、トップスター珠城りょうさんが退団者の一人である当時2番手男役の美弥るりかさんを連れて出てきたのちの一連を指す。

2020年4月19日に宝塚専門チャンネルであるタカラヅカ・スカイ・ステージにて、その模様が初めて放送*2された。2019年6月9日当日にはライブビューイングが実施されており、緞帳前の模様も最後まで映画館に配信されていたが、後述する事情により、その部分に関しては放送されないのではないかとファンは危ぶんでいた。

 

緞帳前、放送されました!

良かった!と同時にわたしは思いました。

これ、数年後、何の事情も知らない人が偶然、タカラヅカ・スカイ・ステージで『クルンテープ 天使の都』東京千穐楽・美弥るりかサヨナラショー付きの放送に遭遇してしまい、緞帳前の二人を見て混乱したのちとりあえず「珠城りょう 美弥るりか」で検索をするだろうということを……。「るりたま」?「たまるり」?

まぁいいか、そう、これを読んでいるあなたのための記事です。

 

緞帳前という特別さとは

宝塚に於いて、緞帳前に出てきて客席に挨拶するのは慣例的にトップスターのみで、退団公演にあたる場合のみトップ娘役を伴うことがある*3、ということのようです。

このときの月組では、そもそも2番手男役が退団するということ自体が異例であるからなのですが、緞帳前に登場したのはトップスターと2番手男役でした。袖から二人が登場するとき、珠城さんが美弥さんの手を引いて、美弥さんがつんのめりながら現れることもそうですし、珠城さんが「勝手に私が連れてきて……」と言ったこともそうですが、本来予定されていなかったであろうことが推測されました。

それは、ファンが認識していた慣例が、内部ではもう少し強い制約であった可能性を想像させます。「本来予定されておらず」「制約に違反している」のであれば当然、公式媒体であるタカラヅカ・スカイ・ステージの放送も望み薄だろう、というのがファンの大方の見方だったのではないかと思います。(と同時に、緞帳前の模様まで放送してほしいという要望を送った方も多いと思います。わたしは送りました。)

結果、無事最後まで放送されました。別に制約などなかったのかもしれないし、ファンの要望の方が通ったのかもしれませんが、そこはどうでもいいことです。

 

緞帳前という特別さとは(2)

 何もかもすべて終わった後に緞帳前に現れた珠城さんと美弥さんは、肩の力が抜けていて、朗らかで、終始暖かく柔らかい雰囲気をまとって、存分にイチャイチャしていました。(ほかに何と表現できるのか……)

思えば、2019年1月29日に美弥さんの退団が発表されたときがわたしにとってのはじまりでした。2番手男役の退団というおよそ歓迎されない発表があって、怨嗟と憎悪が渦巻く音が聞こえていたような気がしていました。このブログの前回のエントリーは、その衝撃と混乱で何もかもを見失いそうな自分を守るために書いたものだと言っても過言ではありません。

書いてみて驚きましたが、1月29日だったことを覚えているものなんですね……。珠城さんの退団発表があった日付は覚えていないのに。その点に関しては、ずっと覚悟していたその日が来たということと、そんなことは起きないはずだと信じたかったことが身勝手な期待を裏切ってやって来た、という違いなのだと思います。

そして、控えめに言っても波風が立ったままの状態で月組新トップコンビの大劇場お披露目でもある公演が幕を開け、東京では3番手男役(当時)である月城かなとさんが怪」我で休演、美弥さんもキーを変更しての歌唱になり本調子でないことがわかりました。珠城さんも途中デュエットダンスのリフトをやめ、お芝居でもショーでも一部演出や振付の変更が加えられる事態でした。そして当然、大きな別れを内包したこの公演は、正直、ただ楽しいだけではありませんでした。

それらの複雑な思いをいっぺんに吹き飛ばしてしまったのが、緞帳前でのお二人の罪のない笑顔でした。(それから、無事復帰し現在は2番手を務めている月城かなとさんがいる今だから素直にそう思えるのだと感じます。)

 ちなみに、ご卒業にあたって美弥さんが珠城さんとの関係性に言及した中で一番刺さった発言はこちらです。

私たちの関係は私たちにしか分からないと思うんですよね。

 『宝塚GRAPH』2019年6月号より

 

「りょうちゃん残って」「一緒に戻りましょう」

さてここからは、緞帳前のわたしが好きなポイントを厳選してお送りします。

 まず、珠城さんが美弥さんの手を引いて現れて二人で肩を組んだ後、珠城さんは何も言わずに美弥さんの後ろをすり抜けて一人で捌けようとします。美弥さんはそれを素早く察知し珠城さんの手を掴んで「だめだよりょうちゃん」と慌てて引き留めます。

珠城さんはたぶん、美弥さんを連れてきて自分は袖に戻るつもりだったんだろうなぁと思います。本気で。でも、美弥さんに引き留められたらそれ以上の押し問答はせずその場に残ります。

逆に今度は、客席に向けて改めて感謝を述べた美弥さんが「りょうちゃん残って」、と珠城さんに場を託して一人で去ろうとします。それに対して珠城さんが「一緒に戻りましょう」と提案すると、美弥さんもそれで納得してその場に残ります。

で?って思いますか?

いやこれ、前述した、緞帳前挨拶はトップスターのみという慣例を理解していると、お二人の細やかな気持ちの交感を感じられてぐっときてしまうんです。相手の心遣いを正しく理解し受け取った上で、相手の立場を思い遣った行動をする、そんな風にして関係を築いてこられたのかなぁと思いを馳せてしまいます。

珠城さんが美弥さんだけを残そうとしたのは花を持たせることに違いないでしょうが、慣例的にはトップスターが去るのはあり得ないことです。美弥さんは珠城さんの立場を思って引き留めたのでしょうし、珠城さんもその心遣いを理解したからこそその場に留まったのではないでしょうか。

そして美弥さんは珠城さんの立場を思って舞台上から退去しようとしたのでしょうし、珠城さんもそれに気付いて「一緒に」の妥協案を思い立って、美弥さんはその気持ちを受け止めます。

全部想像でしかないですが、お二人の間に流れる穏やかで優しい空気がそう思わせます。

 

横向いてる率が高い美弥るりかさん

 緞帳前、せっかくのお客様を目の前にして隣にいる人を見ている率の高い美弥るりかさん。(そして珠城さんに「(私のことは)いいんです、いいんです」とやんわり客席を向くよう促される美弥るりかさん。)(自由)

*4な距離感で❝旦那❞*5が挨拶するのをこぼれそうな笑顔で顔を覗き込む美弥さんに客席は笑ってしまうし、視線を感じすぎて照れてしまう珠城りょうさん。ライブビューイングで見たときからそうだったんですが、「一体何を見せられているんだ……」という気分になって、何もかもがどうでもよくなりますね。

二人で袖に捌けて姿が見えなくなってから響いた美弥さんの「ハハッ!」という軽やかな笑い声が、この公演の本当に最後の締めくくりになりました。

 

これを書いている2020年4月現在、宝塚歌劇団は既に公演中止の只中ではありましたがさらに6月末までの公演中止及び公演スケジュールの見直しを発表しています。これは決して7月以降の再開を意味するものではなく、宝塚に限らずありとあらゆる演劇、アートシーン、文化と生活そのものが先行きの見通せない状態にあります。

本当だったらわたしも、月組大劇場公演初日を控えて大忙し、このタイミングで今回のエントリーも書かなかったでしょうね。まぁそこそころくでもない記事でしたが、残すことになれてよかったです。

誰かに覚えておいて欲しい、幸せな記憶として。

 

 

 

 

*1:成立時期は意外と浅い(※瀬奈じゅんさんの時代だそうです)。

*2:円盤に収録されるのは宝塚大劇場公演の中日、公演終了約1年後にタカラヅカ・スカイ・ステージで放送されるのは東京宝塚劇場千穐楽、と相場が決まっています。

*3:この慣例について自分なりに調べてみたのですが、宝塚歌劇団の公式HPで各組のページを見ると、役職(?)が表示されているのは「トップスター」と「トップ娘役」だけです。公式から就任の発表があるのも前述の2役に加えて「組長」「副組長」のみ、ということを考えると、組織的にはそれ以外の役職はないことになっているのだと理解しました。役職なしの生徒に特別待遇をすることがただのえこひいきになる、といった建前なのかなと推察します。

*4:2020年のホットワードです。

*5:美弥るりかさん談。

わたしの知らない研8の珠城りょう

以前から少しばかり気になっていたことがあります。

 

わたしが珠城りょうさんを知ったのは、というか、月組を初めて見たのは『All for One~ダルタニアンと太陽王~』でした。その後半年程度の期間を空けて、徐々に珠城さんに興味を持ち始めたところで、彼女がトップスターとしてはとても若いと言われていることを知ります。研9でのトップスター就任は異例のスピードだと。

ところが、宝塚に全く詳しくないわたしには、それがどのくらい珍しいことなのか、どういった経緯だったのかというのはイマイチわかりませんでした。

そもそも、舞台上での珠城さんは、安定感とか大人の男っぽい落ち着きだとか、(未熟という意味も含む)若さといった特徴からは遠いところにある男役だと思うので、余計に「若い」と言われていたことに対してピンと来なかったのだと思います。

 

トップスターとして若い?

この記事を執筆しているのは2019年2月、珠城さんはトップスターとして3年目を迎えています。この時点での各組トップスターと年次は以下の通りです。

花組 月組 雪組 星組 宙組
明日海りお 珠城りょう 望海風斗 紅ゆずる 真風涼帆
(研16) (研11) (研16) (研17) (研13)

 真風さんが研13であり、現時点で珠城さんが特別若いという印象はありません。

 

当時はどうだったのかなと思い、トップスター就任直後である2016年12月時点*1での並びを調べました。

花組 月組 雪組 星組 宙組
明日海りお 珠城りょう 早霧せいな 紅ゆずる 朝夏まなと
(研14) (研9) (研16) (研15) (研15)

あっ……なるほど……。
このうち、珠城さんは9月に龍真咲さん(研16)の、紅さんは11月に北翔海莉さん(研19)の後任としてトップスターに就任したばかりでした。確かに、すごく若いと感じる……。

でも、研9で、とは言え、大劇場お披露目公演の『グランドホテル』は2017年1月からの公演だし、それもうほぼ研10じゃない?とも思っていました。タイミング的な問題で、すごく若く見えてしまっただけかもしれない、とも。

 

2番手期間が短かった

もう一つ、珠城りょうさんは2番手期間が短かったということをよく目にしました。それでも、2番手として大劇場公演は2作品経験しているし、つまり約1年は2番手だったわけでしょう? そう考えると、1年は結構短いけれど、めちゃくちゃ短かった!というほどではないのではないかなぁ……とこれもぼんやり考えていたことです。

珠城さんの2番手~トップ就任前後の時期については全く知らないので、当時の発表や出来事を時系列に整理して、当時どう受け止められていたかのリアルな感覚を知りたいと思いました。

 

その前に、月組トップスター龍真咲時代の番手に関して

こちらは本論ではないため、わたしの聞きかじりの知識で簡単にまとめてしまいます。*2

龍真咲さんのトップスター就任に伴い、準トップスターという位置付けで明日海りおさんが就任します。まず準トップスターとか聞いたことないし、この体制で大劇場2作品をトップと準トップ役替わりで公演していたというので、この時点でかなり異例のことだったのだろうなぁと思います。その後、明日海りおさんの花組への組替えによって、トップ/準トップ体制は終わりました。

トップスターに続く番手は、このあと大劇場4作品ぶん、明示されることはなかったようです。*3 明日海りおさんの組替えと同時期に月組に組替えして来たのは凪七瑠海さん。同期の美弥るりかさんとW二番手格、それと同格程度の役付きで珠城りょうさんがいる時代になりました。

そしてこの時代が終わる時期について、次項で追います。

 

2015年9月~2016年9月まで、たった1年間
2015.9.1~ 『DRAGON NIGHT!!』
  公演プログラムとフィナーレの並びが龍・珠城・美弥になる
2015.10.1 公演ラインナップ発表 全国ツアー 主演:珠城りょう、愛希れいか
2015.10.29 『タカラヅカスペシャル2015』ポスター画像アップ
  各組二番手の並びに珠城りょうが掲載される
2015.11.13~ 『舞音-MANON-』『GOLDEN JAZZ』宝塚大劇場
  フィナーレで珠城りょうが二番手羽を背負う
2015.12.15 トップスター龍真咲 退団発表
2016.1.3~ 『舞音-MANON-』『GOLDEN JAZZ』(東京宝塚劇場
2016.3.15 次期トップスター 珠城りょう決定
2016.3.19~ 『激情』『Apasionado(アパショナード)!!III』(全国ツアー)
2016.6.10~ 『NOBUNAGA<信長>-下天の夢-』『Forever LOVE!!』宝塚大劇場
2016.8.5~ 『NOBUNAGA<信長>-下天の夢-』『Forever LOVE!!』(東京宝塚劇場
2016.9.4 龍真咲 退団
2016.9.5 珠城りょう トップスター就任

調べながら書き出して、「えっマジか」「マジで言ってんの?」と衝撃を受け止めきれませんでした。2番手期間が短いどころの騒ぎじゃない、初めて2番手羽を背負った日から4か月後には次期トップスターになることが決まっているとは……。

珠城りょうの負荷テストでもしてたの?

 

加速度を増して動き出す時代

2番手の全国ツアー主演は、2014年に紅ゆずるさんがしているし、最近だと2018年には柚香光さんが、2019年には礼真琴さんが行う予定になっています。それらと異なるのは、全国ツアー主演珠城りょうと発表された時点では2番手羽を背負ったことがなかった(=月組2番手と認識されていなかった)状態だったことでした。しかも現トップ娘役*4である愛希れいかさんを相手役に迎えての公演、そりゃあ……そりゃあ色々あったんでしょうね……という……。

タカラヅカスペシャル2015』ポスター画像での2番手示唆があり、『舞音-MANON-』『GOLDEN JAZZ』ではその通りに2番手羽を背負って大階段を降りることになりました。大劇場公演千穐楽の翌日に龍真咲さんの退団発表があったとき、珠城りょうさんが次期トップスターになると考えた人はほとんどいなかったのではないでしょうか? 何もかもが突然動き出し、時代が変わってゆきます。

そういえば、珠城りょうには時間がなさすぎた、と言われているのを見たことも思い出しました。

 

トップスターになるということ

珠城さんは度々、トップ就任のお話をいただいたときはすぐにお返事できなかったという話をされていますが、それは当然トップスターに「責任」という側面があるからだと思っていました。実際に、彼女の発言からそれを読み取ることはできるのですが、彼女が言及しないもう一つの側面がトップ就任にはある、ということを、今回順を追って調べていくことで気づきました。

トップスターになるということは、退団へのカウントダウンのスタートでもあります。退団されるトップさん・トップ娘役さんの会見を見ると、終わりを意識してその立場に就くのだということは、わたしにも何となくわかってきました。

珠城さんがトップ就任の打診をされたのは、おそらく、驚くべきことに研8のときです。彼女の意思に関わらず、研8の時点で自身の去就すら突きつけられることになったのだ、ということをわたしはようやく理解しました。

 

2019年2月とは

美弥るりかさんの退団発表が数日前にあり、七海ひろきさんが大劇場を卒業し、今日は紅ゆずるさんと綺咲愛里さんの退団会見がありました。

宝塚を熱心に見るようになってからまだ1年程度なので、こんなにも心が千々に乱れるようなことが初めてでとても動揺しています。そして、タカラジェンヌ愛する人ならば誰でもが経験することになるその時を、わたしはどう迎えるのだろうということが頭から離れないでいました。空っぽになってしまうのか、絶望してしまうのか、清々しい気持ちになっているのか、たくさんの感謝を送っているのか。

そんな中で気を逸らすようなつもりで、「気になっていたけどそのままにしていたこと」を調べることにしました。そうして改めて、彼女たちが自分の時間と向き合いながら宝塚という世界で生きているということを実感しています。

じゃあ、わたしもそうやって生きようかな。

 

「一緒に行って欲しいと、お願いしたいのですが……でも私は死にかけてるし……」

「わたしたちはみんな、いずれ死ぬのよ」

『グランドホテル』*5より オットーとフラムシェンの会話

 

 

 

 

 

 

 

*1:タカスペ出演者で調べようとしたためです。

*2:大きな勘違いをしていたら教えてください……。

*3:最近気付いたのですが、トップスターとトップ娘役は公式で発表されますが、二番手以下は発表されないので、劇団としては公式には二番手というポジションを認めていないのか、と。生徒の私設FCと同じで、完全にそれありきで機能しているんだけど、建前上認めていないという性質のものなのかなと考えています。

*4:当時

*5:大好き!

計画通り上手く運ぶわけはない宝塚市への旅

月組エリザベートー愛と死の輪舞曲ー」宝塚大劇場千秋楽公演(愛希れいかさんのサヨナラショーもついている特別な公演!)である10月1日のチケットを持っていたわたし(関東在住)が、台風24号に翻弄されながら宝塚市を目指す旅の物語である。

 

嵐が来る前

10月1日に宝塚大劇場へ行く予定は決まっていたのですが、前日の9月30日に花組「MESSIAH(メサイア) −異聞・天草四郎− /BEAUTIFUL GARDEN −百花繚乱−」のチケットが取れてどちらにも行きたかったので、どちらにも行くことにしていました。

つまり、9月30日は東京宝塚劇場花組公演を観て、10月1日は日帰りで宝塚大劇場の予定でした。観劇オタクにはよくあることですね。

ところが大型で勢力の強い台風24号が発生し、上記日程にモロ被りの進路であることから、予定を再考しなければならなくなります。

 

9月26日にしたこと

10月1日は航空券を取っていたのですが、この時点で当日飛行機が飛ぶかどうかに賭けるのは非常に危険でした。もし飛行機が定刻で飛ぶとしても、空港までの電車がダイヤの乱れなく動いているか、関西方面の電車も同じようにダイヤの乱れなく動いているか、を考えると10月1日に移動するのはかなりリスキーだと思いました。(線路に木が倒れたりしたら終わりですよね)

ということは、前乗りする必要があるので、まず10月1日神戸行きの航空券はキャンセルしました。同時に、9月30日のチケットの譲り手を探しました。幸い友人が行ってみたいと言ってくれたので、花組をプレゼンしつつチケットを託しました。

9月30日の宿泊先も用意する必要がありましたが、それは宝塚大劇場周辺であることが条件でした。先の台風で学習していたのですが、電車が止まってしまうと、近くまで行けたとしても結局劇場までたどり着けないのです。迷った挙句、残っていた宝塚ホテルの残り一室を仕事中に抑えました。仕事どころではない。

 

9月29日にしたこと

行きの航空券をキャンセルしたあと、代わりの足を用意するのは台風の進路をギリギリまで確認してからと思っていました。

この日、JR西日本阪急電鉄は9月30日正午を目処に運休予定と発表しました。 

空路と陸路なら陸路の方が確実と思っていましたが、陸路で向かった場合はより時間がかかるため、状況によっては途中で電車が止まる可能性が高いと判断、9月30日神戸行きの一番早い飛行機が残り一席だったので、慌てて昼休憩に抑えました。笹食ってる場合じゃねぇ!

この予定だと、宝塚大劇場周辺には正午より前にかなり余裕を持って到着できます。

9月30日は11時(貸切)と15時の二公演がありました。当然チケットは持っていませんでしたが、荒天の影響で交通手段がなくなっている場合当日券が買えるかも!と気付き、一気にテンションが上がりました。*1

ところが夜、翌日の当日券情報を公式HPで確認したところ翌日は当日券発売の予定なし、かつ15時の上演については当日午前に決定と書いてあります。マジか……。

 

9月30日午前中

定刻で飛行機は飛び、目的地に到着すると雨も降ってないし風も全然強くないですが……、ずっと気にして見ていた公式HPでついに15時公演の中止が発表されました。

阪急電車もびっくりするくらい人が乗ってないけれど、それもそのはず、百貨店やデパートは前日の段階で臨時休業を発表していますし、それに準じておそらくほとんどのお店や催し物は本日やっていないでしょう。あと、前提として正午を目処に電車が止まります。

という状況で、チケットも持っていないし当日券も売っていないけれど、宝塚大劇場へ行きました。

お気づきの方もいらっしゃると思いますが、宝塚市を目指す旅はここで無事到着して話が終わってしまうんですが、この後もすごく楽しかったので旅の思い出を全部書きます。

 

9月30日宝塚大劇場

到着したのは10時頃、この時点で雨は降っていませんでした。まずは館内状況を見て回りました。レストラン「フェリエ」「くすのき」は休業していましたが、それ以外のお店は終了時刻の繰り上げ予定はあるものの営業中で、寂しい感じはありませんでした。

宝塚歌劇の殿堂も営業中。月エリザ期間通算3回目ですが行って参りました。さすがに人は少なく、エリザベート展の映像コーナーもいつでも入って座って見られる状態でした。わたしはこの日まで見られていなかったので、楽しく拝見しました。すごい!テニミュ(概念)じゃん!『お前は青学の柱になれ』を初代〜9代目まで繋げて編集したみたいなエモさだよ!(10代目は現在公演中なところもテニミュと同じです!) そして同じ役だからこそ違いがわかってとても興味深かったです。やはり1998年宙組公演の花總まりさんが素晴らしくて、細切れ編集の『私だけに』でも心を打つものがあって涙しました。あとは銀橋にトートが仁王立ちになるシーンで、「うわっっっすごい太ももだ!!!」と思った瞬間、画面左肩に2009年月組と入っていました。これが瀬奈じゅんさんの太もも……!*2もちろんこの後、カンパニー/BADDY展示も楽しみました!

次はキャトルレーヴです。この後ホテルに戻って部屋で半日過ごすわけですから、この機会に、買おうと思っていた鳳月杏さんの「FOCUS ON」を!と思って書籍コーナーに直行したら売り切れていました……。計画通り上手く運ぶわけはない……。でも、東京のキャトルレーヴより品揃えがあるので、過去の珠城さんの2L判ブロマイドを購入しました!ホテルで部屋に飾る!

それから、歌劇コラボメニューのランダム缶バッジチャレンジ3回目のためにレストラン「ラ・ロンド」へ。

入店した時点で、お店が閉店するまで残り40分強。急いで食べます。食後のコーヒーをいただきながら、外袋を開封。過去2回のチャレンジは2回とも明日海りおさんでした。珠城りょうさんを自引きしたい、オタクとしてはその一心です。さて、3度目の正直はなんと……!明日海りおさんでした。ホントかよ。

いいオチがついたところで宝塚大劇場を後にしました。わたしが館内をうろうろしていた時間というのは11時公演の上演中でしたが、いつも通りとはいかないものの思っていたよりたくさんの人が来ていました。ここにいる人というのは、11時公演のチケットを持っていなくて、15時公演は中止なのでそれを観るわけでもなく、つまり観劇できないのが分かっていてお昼には電車が止まるという条件下でわざわざ来た人なのでしょう。そう考えると、宝塚歌劇のエンターテイメント力に感服しました。実際、わたしもすごく楽しく過ごせました。

 

9月30日宝塚ホテル

いつか泊まってみようと思っていた宝塚ホテルなので、この機会があって良かったです。

(宝塚ホテルとはこのような場所です。)(この写真、無意識に珠城りょうさんの正面に立って撮っていますね。)

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お部屋に入ってとりあえずテレビをつけると、初期設定がスカイステージ。さ、さっすが〜〜!

お部屋の備品の一つ調子が悪かったので、フロントに連絡して係の方に来ていただきました。そのときもテレビはスカステをつけっぱなしにしていて、ちょうど宙組銀河英雄伝説の東京千秋楽が終わるところだったので、『この愛よ永遠に -TAKARAZUKA FOREVER-』が歌われていました。係の方「この歌聴くと、一緒に歌っちゃいますよね〜」とお話ししながら備品を確認してくださったんですが、わたしは初心者もいいとこなので全然歌えません。文化の違いを感じながらお話を聞いていました。

その後は、宝塚ホテルを探検です!昔っぽさを残しながら、増改築を繰り返して現在に来ているのがすごくよく分かりました。肩肘張っちゃうようなクラシックさではなく、ずっとそこにある安心感みたいなものがありました。館内にほとんど人は歩いておらず、レストランやバーも一部休業、こんな写真が簡単に撮れるほど誰もいなくて静かだったので、世界の終末感があってよかったです。

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外は暗くなって、さすがに風雨が強くなっていました。完全に殺人事件が起こる雰囲気です。

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しかし、歩き回ってよく見ると、館内はところどころ雨漏りする箇所があるらしく、青のポリ容器に布を仕込んだ雨漏り対策セットが設置されており、殺人事件は起こらないタイプののどかな洋館であることに気づきました。良かったです。

スカステの映像が乱れたことで風雨の強さを感じつつ、横になった瞬間に寝ていました。

 

10月1日宝塚大劇場千秋楽

感想は割愛!1ヶ月ぶりに観た千秋楽公演はなんかもうすごくて、すごくドキドキして、なんかすごく良くて、本当に良くて、サヨナラショーというものは聞いたことしかなくて、初めてのサヨナラショーを観て、もうあまりの美しさ(それは視覚だけのことではなく、宝塚歌劇が築き受け継ぎ形になっている全てのものに対して抱く感情)に涙がポタポタと止まらなくて、それとは対照的なまでに等身大で晴れ晴れとした退団者のご挨拶に胸を打たれ、たまちゃぴ最高だなぁあああああああって思いながら腕時計で時間を確認しました。フライトの時刻が迫っています。

 

10月1日帰路

わたしが乗らなければならないのは、神戸空港19時10分発の飛行機です。このリアルな感じ、未来のわたしに必要となる情報だと思われるので書き残す使命を感じました。

大劇場で席を立ったのは17時、緞帳前の最後のご挨拶は見られませんでした。というのも、終演後に席を立つ方たちと同じタイミングでは人の波に飲まれてしまうので、敢えて早めに行動しなければなりません。

席を立ったら早歩きで館内を移動し、ロッカーに預けておいた荷物を回収、花のみちとソリオを早歩きで通り抜けて17時20分頃には阪急宝塚駅に到着しました。電車の乗り換えはうまくいったので、ポートアイランド線神戸空港駅まで順調にたどり着くことができました。神戸空港でチェックインを終えたのが18時30分です。保安検査場も混んでいなかったので、無事フライトに間に合いました。

これが、トップ娘役サヨナラショー付き・退団者2名の場合のタイムスケジュールの限界ラインだと思われます。

 

おわりに

このエントリーは9月30日にホテルで暇を持て余しつつ書き進めていたもので、最後は、

結論から申しますと 番狂わせ おもしろい!

としてオチるはずだったんですが、最後の最後に計画通り上手く運んでしまったのでオチを見失いました。

あら?でもそうすると、

計画通り上手く運ぶわけはない

予定通りいかない番狂わせ

だったのかしら?

 

*1:公演が中止になることは全く頭にありませんでした。

*2:珠城りょうさんの太ももが素晴らしいことに気づいた頃にツイッターで検索していると、珠城さんの太ももに言及している方の瀬奈じゅんさんの太もも言及率が高くて気になっていたのです。

宝塚初心者が抱きがちな疑問に初心者が答える

自分に初心者の自覚があるうちに、自問自答形式のQ&Aを作成しようと思いました。

何の参考になるかわかりませんが、よろしくお願いします。 

 

劇場へ赴いて観劇した日篇

Q1.拍手のタイミングがわからない。

A1.主要人物の登場SEみたいなものだと思ってください。歌終わりに拍手が入るとは限りません。初心者にはわからないので適当に合わせるか、玄人に任せて観劇に集中しましょう。

Q2.休憩が30分もある。

A2.テニミュ生まれテニミュ育ちのわたしにとって休憩は15分と体が覚えていたので、最初はどうしても残り10分弱は持て余していました。お手洗いに行く、食べ物や飲み物を買ってみる(口にしてみる)、プログラムを買ってみる(読む)、劇場内は広いので散歩してみる、劇場内のキャトルレーヴ*1に行ってみる、などすると30分が終わると思います。

Q3.お芝居はともかく、ショーで人の見わけがつかない。

A3.慣れましょう。わたしはある時突然、解像度が上がったみたいに顔の違いがわかるようになりました。たぶん、あの独特の舞台メイクを脳が「仕様」と認識すると、そこからの差異に目が向くようになるのだと思います。

Q4.誰が偉い(?)人なのかわからない。

A4.ショーだと場面によって見せ場のある人が違うから、真ん中で目立っている人が必ずしもトップスターだとは限らないですからね……難しいですね……。ただし、上から下まで寸分の隙もなく全身キラッッッキラの衣装を着ている人はトップスターです。キラキラが物理的に多い人が偉い(?)人です。

Q5.あの人誰!?

A5.どういう場面でどの辺にいてどんな衣装で何をしているどんな人だったか、ある程度の詳細がわかれば、一緒に行ったヅカオタかツイッターの人が教えてくれます。ただし、教えてくれた名前でググって宝塚歌劇団公式プロフィール写真を見ても、それがまた独特なので、本当にその人だったのかわからずモヤモヤします。

Q6.ショーを見たらお芝居をよく思い出せなくなっている。

A6.仕方ないですね。

 

素朴な疑問篇

Q7.何組があるの?

A7.ここに書いてあることで大概の疑問は解消できます!

kageki.hankyu.co.jp

Q8.花組月組雪組星組宙組、組によって特色の違いはあるの?

A8.あるといえばあるけど、ないといえばないのではないしょうか?少なくとも、初心者が理解できるレベルの違いはないと思います。単純に、所属している人が違います。どちらかというと、その時々のトップスターによって演目の傾向も組の雰囲気も変わるのではないかと思います。わたしはここらへんが気になって、各組を順番に見てみようとふと思い立ち実行している中で、珠城りょうさんによって深刻なエラーが発生しました

Q9.〇〇さんって何歳くらい?

A9.年齢は非公開です。出身校(中学校だったり高校だったりする)が公表されているのと、何回目の宝塚音楽学校受験で合格したかというのはご本人がお話されることも多いため、だいたい想像がついたりしますが、口に出すのは粋じゃねえな……。何歳になったかわからないお誕生日をファンは毎年祝っています*2

Q10.トップスターって誰がなるの?

A10.一企業の人事です!わかりません!

Q11.チケットが取れないんだけど……。

A11.「宝塚観てみたいなぁ」よりは「(公演名)観たいなぁ」「〇組(〇〇さん)に興味あるな~」と具体的な興味のありかを公言していると、どこからともなくヅカオタが現れてチケットを用意してくれることがあります。もし誘われた場合、見た感想を伝えると大喜びするので素直な気持ちを伝えましょう!

 

月組エリザベート-愛と死の輪舞曲-が観たいなぁ』*3

 

*1:宝塚歌劇団公式ショップ。写真・BD/DVD、CD・書籍類の定番から、スターのアクリルキーホルダーまであります。個人的には、トップスター監修グッズの謎センスに目が釘付けになるのでチェックをお勧めします。ちなみにわたしは珠城りょうさんの監修グッズ(犬)を買っています。

*2:実はテニミュキャストもそうなのだ。

*3:この手法は純粋な心を持った初心者にしか適用されません。

珠城りょうさんによって深刻なエラーが発生しました

珠城りょうさんを好きになってしまったので、はてなでブログを書きます。

 

こういった場合、まず筆者の属性が必要です。

ジャニオタが〇〇にハマった、とか、根っからの2次オタが〇〇に行ってみた、みたいに見出しに使われるやつです。

わたしはほんの数か月前までは、テニモン*115年生という自負を持ち、観劇を趣味とする者として生きていたのですが、現在は自分がよくわからないでいます。

それまで、すべてはテニミュがきっかけで演劇を好きになり、小劇場も2.5次元も帝劇日生あたりも何でも観てみたくて、年間70~90回くらい観劇して、うち30回*2くらいはテニミュでした。

ところが今、特に何も観に行っていません。

劇場の座席に着くと、「本日は、ようこそお越し下さいました。宝塚歌劇団月組の、珠城りょうです。」*3という幻聴が聞こえるのです。雪組公演中の東京宝塚劇場でも、TDCホールでも、池袋芸術劇場のシアターイーストでも。至極真面目に言っています。

それがわたしの頭の中にだけ響いているアナウンスだということはわかっているし、珠城りょうさんが出演していないということも当然わかっているんですが、舞台を観ていてもいつまで経っても珠城さんが出てこないことにガッカリしてしまっているのです。もうびっくりするほど上の空です。

さすがにこの状態では、まともに演劇を観ることは不可能です。突然に、趣味と言える趣味を失ってしまいました。

電波オデッセイ vol.1

 

珠城りょうさんを好きになったきっかけ

これが、わからないのです。

初めて宝塚を観に行ったのは2011年に遡ります。大空祐飛さんがトップスターの時代の宙組でした。真っ当にエンターテインメントで、それまでわたしが観てきた演劇の環境とはホスピタリティが段違いで感動しましたが、それで終わってしまいました。それからも何年かに一度くらい、宝塚作品を観ていました。だから、初めて宝塚を観た衝撃で……!というような刷り込み的なものではないのですね。

珠城りょうさんを初めて拝見したのは『All for One~ダルタニアンと太陽王』です。しかしこのとき、わたしの目と心を独り占めしたのは愛希れいかさんでした。宝塚に深く興味を持つことになったきっかけは、間違いなく彼女です。

珠城りょうさんの印象はあまり残っていません。ダルタニアン役の珠城さんは長髪で、それが女性っぽい顔立ちを強調しているようでどちらかというと苦手に思っていました。(今なら、自分に「目の付け所がいいね!」って言います。)

 

 それは突然に?

宝塚のスターさんに心奪われる瞬間は、雷に打たれるようにして訪れるものだと思い込んでいました。いつでも鮮明に思い出せるような、はじまりの「瞬間」があると思っていたのです。そういう意味では、珠城りょうさんは違う、と思っていました。

『カンパニー-努力、情熱、そして仲間たち-/BADDY-悪党(ヤツ)は月からやって来る-』を経ても、わたしは雷に打たれることはありませんでした。この頃、舞台写真は愛希れいかさんのものばかり買っていました。(公演中買ったものの中で、珠城りょうさんが写っているのは2枚だけでした!)

これと言った転機も経緯もなく、しかし振り返ってみると、上述東京公演終盤ごろから次第に様子がおかしくなっています。気がついたら、ファーストフォトブックを買っていました。ぼんやりと珠城りょうさんのことを考える時間が多くなって、急に感極まって泣き出したり、もしかしてわたしは珠城さんと結婚してしていたのでは?*4と思い始めます。(正常です。)

これは完全に余談なんですが、この「わたしは珠城さんと結婚していたのでは?」感は珠城りょうさんの魅力そのものの表出ではないかと考えました。目からビームを出して射殺したり、強引に心を奪っていくタイプではなく、いつの間にか心に住みついていて隣からいつも体温を感じるような、そういう魅力だという気がしています。

 

わからなくて良い、ということがわかった

わたしは「わからない」ものが嫌いです。みんながわかっているのに、わたしだけわからないのはイライラします。その最たるものが、恋愛でした。世に溢れる会話も歌も物語も、人生の必修科目でみんな履修済みでしょ、といった体で語りかけてくるけど、わたしにはわからなかったし、わからないことにずっとコンプレックスがありました。演劇も、恋愛がドスンと横たわっているような作品は積極的に避けて選んでいました。

現実での「わからない」ならまだしも、物語上での「わからない」は致命的です。恋を描くのなら、恋(または恋と勘違いしそうな感情)が起こらざるを得ない条件を整えるか、惹かれていく経緯を丁寧に描くかして、理解させて欲しかったのです。

昨日まで何とも思っていなかった人を特に何事もないまま今日好きになった、みたいな人物像では納得できなかったし、それを恋だという理由にして説明したつもりになっているのも納得できませんでした。

わたしが珠城りょうさんに出会って生じた変化の、これが恋かどうかというのは重要ではありません。

いつ、何がきっかけで、どんなところが好きになったのか何一つ答えられないから、誰かにこの気持ちを説明して理解してもらうのは無理でしょう、そう、少し前のわたしなら思ったはずです。でも、まるで出来損ないで思い付くままに書き殴られた駄作の脚本のように、「わからない」ことがあるということを知っている人が、この世界にはたくさんいるんだと今ならわかります。

 

この愛 人生よ おはよう

唐突で理不尽で、脈絡がなく意味不明でめちゃくちゃで、当事者以外にはそれをひとつのものだと言い表すことができないかたまりを恋だと呼ぶのなら、わたしはすっかり、恋の魅力に参ってしまっています。

2017年に月組で再演された『グランドホテル』は、珠城りょうさんのトップスターとしての大劇場お披露目公演*5でした。初演ではオットーを主役としていたものを、珠城さんの持ち味*6に合わせて、フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵を主役とした物語へと変更されています。それは、借金の取り立てに追われた男爵が不承不承盗みに入った部屋で、踊る意味を見失ってしまった年かさのバレエダンサーであるエリザヴェッタ・グルーシンスカヤと出会い、一夜で情熱的に恋に落ちた二人の話が中心にあります。

二人で歌われるLove Can't Happen

誰にわかるだろう(わかるでしょう) なぜ 震えている

その答えは一つ 恋をすればわかるさ(わかるわ)

あなたも

 何をどう考えてもわたしの理性では理解の及ばない恋を、二人はこのように表現します。今のわたしに伝えるためにそう言うのですか?

男爵との一夜を過ごした朝、グルーシンスカヤが歌うのは、Bonjour,Amour

なんにも 彼の事 まだ知らない それでも

心が歌い出すの Bonjour! A l'amour!

 少女のようにはしゃいでいるグルーシンスカヤを見ていると、涙が出てきます。わたしはこの胸の高鳴りを知っている!と思います。

 

あんなに用心して避けてきた恋愛主題の演劇、当然ながら宝塚作品では完全に主流です。これまでとは打って変わって、浴びるようにロマンスばかり観ているわけですが、恋愛のわかることもわからないことも、そこに珠城りょうさんがいるだけで、わたしの中では圧倒的に説得力を持って存在しているのです。

『激情-ホセとカルメン-』のホセにしても、『ロミオとジュリエット』のロミオにしても、衝動に突き動かされるままに恋に身を投じてしまう愚かさだったり幼さだったりというものを、理性的なわたしは理解しがたいと思うけれど、それが珠城りょうさんの存在によって反転して、ホセやロミオの狂おしいまでの恋しい気持ちが流れ込んでくるようです。

わたしは現在、珠城りょうさんを媒介にして夢見る世界へ接続されているのですが、逆説的に言えば、珠城りょうさんなしではどこへも行けなくなっているのではないか、という気がしています。

でもそれでも、そのことを特に不安に感じたりもしていないので、本当に「わからない」なぁと思っています。

 

streaming.yahoo.co.jp

 

 

*1:いにしえのテニミュオタクの自称

*2:イベントやドリライも含めると40回は下らない状況だったのでは

*3:トップスター(主演者)によるご挨拶のアナウンス。「本日は〇〇にようこそお越し下さいました。宝塚歌劇団月組の、珠城りょうです。只今より、〇〇脚本・演出、作品名〇場を、指揮〇〇により開演いたします。」

*4:Twitterで検索すると同様の症例の方が何人かいらっしゃいました

*5:トップスターお披露目公演は『アーサー王伝説

*6:珠城りょうさんは絵に描いたような健康優良児(?)なので、死にかけているオットーはさすがに無理です